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南洋植物
かつては植物は、広く光合成をする生物一般、すなわち藻類全体やシアノバクテリア(藍藻)を含んでいた。さらに、光合成能力を失った植物と考えられていた真菌や、時にはシアノバクテリア以外の細菌まで含むこともあった。 しかし現在は、系統が異なるものは植物から除かれる。細菌(藍藻を含む)や真菌(カビ、キノコ等)は明らかに系統が異なり、光合成を行う藻類の中にも褐藻(コンブ・ワカメなど)・珪藻など系統が異なるものがある。それらを除いた単系統が植物と呼ばれる。 ただし、具体的にどの系統を植物と呼ぶかは定説がなく、次のような諸定義がある。 陸上植物 コケ植物、シダ植物、種子植物からなる単系統。陸上で進化し、高度な多細胞体制を持つ。この語法はリン・マーギュリスが唱え、マーギュリスにより改訂された五界説と共に広まった。しかし、非常に近縁な緑藻植物などが含まれておらず狭すぎるという点がある。 ストレプト植物 陸上植物、車軸藻、接合藻からなる単系統。 緑色植物 ストレプト植物と緑藻植物からなる単系統。葉緑体がクロロフィル a/b をもち2重膜である。単に「狭義の植物 (Plantae sensu stricto)」と言った場合、これを意味することが多い。 アーケプラスチダ 緑色植物、紅色植物、灰色植物からなる、おそらく単系統のグループ。葉緑体が2重膜である。シアノバクテリアを細胞内に共生させた生物を共通祖先とする単系統群であるという仮説に基づき、トーマス・キャバリエ=スミスがこの系統を植物と定義した。単に「広義の植物 (Plantae sensu lato)」と言った場合、これを意味することが多い。ただし、より広義の意味と対比させ、「狭義の植物界」と呼ぶこともある。 バイコンタ アーケプラスチダ、クロマルベオラータ、リザリア、エクスカヴァータからなる単系統。アーケプラスチダは側系統であり、他のバイコンタはその子孫だが葉緑体を失った、という仮説に基づき、バイコンタを植物界とみなす説が出ている(Nozaki et al. 2007など)。非常に広いグループであり、全ての(真核)藻類と多数の非光合成単細胞生物をも含む。ただし、非主流の系統仮説に基づいており、また広すぎて実用的でないため、あまり受け入れられてはいない。 このように、植物の定義が定まらないため、なるべく植物という名を避け別の呼び名を使う傾向がある。これは、動物がほぼ常に後生動物の意味で使われ、むしろ後生動物という言葉のほうが使われなくなりつつあるのとは対照的である。柳田國男が「南島は我々の故郷」と指摘しているような、あるいは島崎藤村が『椰子の実』で詠いあげているような、日本人が南洋に特に強い思い入れを寄せるようになるのは明治以降であり、それ以前は西方浄土や蓬莱山といった他の伝承と同じ宗教的な異界思想のひとつに過ぎなかった。その後の鎖国政策において、日本は朝鮮・琉球を「通信の国」、中国・オランダを「通商の国」と位置付け、日本を世界の中心として物事を視るという考えを一般庶民へ植え付けた。江戸時代から培われた一種異様な世界観を背景として明治に入り、琉球国が琉球藩となった後も、これを外国と見る意識と日本の一部と見る意識が交錯し、「南」に対する特別な感情の土壌を育んだと考えられている。 その後、1885年(明治18年)の巨文島事件や、1887年(明治20年)の海防整備の勅令などを受け、日本人の外洋への関心が一気に高まった。また、西太平洋の赤道付近に広がるミクロネシアの島々のうち、現在の北マリアナ諸島・パラオ・マーシャル諸島・ミクロネシア連邦を国際連盟から委任されて統治するようになり、「南の島」は手の届くところへやってきた。その後、ロシアを退けて満州などの大陸へ目を向けた北進論と、南洋諸島への進出を唱える南進論の二論があったが、政府の関心は北進で、海防論に代表されるようにもっぱらロシア帝国の南下政策に向けられており、南進は末広鉄腸の『南洋の大波濤』、須藤南翠の『曦の旋風』といった小説や、浮世物語論争や西郷隆盛生存説などの喧伝の中の話に過ぎず、庶民の間の娯楽の中で浸透している程度であった。 そんな中、1900年(明治33年)、後に南の島ブームの原点とも評される押川春浪が、『海島冒険記譚 海底軍艦』を発表する。この作品は当時の少年を熱狂させ、フロンティア精神、冒険心を大いにかきたてた。 第二次世界大戦の只中、敵性文化の排斥著しい1942年(昭和17年)10月、ジェームズ・チャーチワードの著作英: The Lost Continent of Mu(『失われたムー大陸』1931年)、英: The Children of Mu(『ムー大陸の子孫たち』1931年)の2冊を仲木貞一が抄訳した『南洋諸島の古代文化』(岡倉書房 菊版260ページ31章 初版3000部)が出版され、南洋幻想の概念に、新しくムー大陸が登場し、戦後の様々な作品へと融合、波及していった。 日本人が国名が示されることの無い「南の島」という言葉や「南洋」という言葉に抱く漠然とした「暖かく、未知の発見と出会いのある、ロマンチックなユートピア」であるというイメージはこうした背景から生まれている。
